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東京都 熊倉 ともこ
当時陸軍製紙廠足利利工場に勤む。敗戦の夜、糧秣倉庫があけられ、寮生に砂糖が配られた。寮の縁に腰掛け、宝物の様な砂糖を嘗めた。昼から泣き通し、泣き疲れ混沌とした15歳の頭の上に皓々と輝く夏の満月が永遠の光を投げていた。
夏満月 敗れし山河あまねくし
東京都 佐藤 一雄
宇都宮の兵営を出發したのは15日の早朝だった。車窓から荒れた風景が飛ぶたびに胸が痛んだ。父母のやっれた顔に出会った時、言葉はなかつた。巻脚袢をはずして
いると、母は「戦争は終わったんだよ」と言った。
敗戦を 背に片蔭をさまよへり
愛知県 高柳 善明
栃木県黒磯町で終戦。陸軍一等兵の私は、敗戦を信じない殺気だった上官の命令で、本土決戦に備える為の兵器を、防空壕へ運び続けた。濠から眺めた空の青さと、泣き明かす蝉声が今も忘れられない。
父ははの 空戻り来ぬ終戦日
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引用元 「昭和万葉俳句前書集」 【高木 二郎発行】
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